上司は優しい幼なじみ


翌日。目の下にクマができてしまい、必死にコンシーラーやファンデーションで隠していると、遅刻しそうになった。

ギリギリ5分前にフロアに駆け込み、肩を上下させながら席に着く。

「あら、珍しいわね。寝坊したの?」

「山本さん、おはようございます。なんか昨日あまり寝れなくて…クマを慣れない手つきで隠していたらこんな時間になっちゃいました」

椅子に座り、コンパクトミラーで目元を確認する。
うん、目立ってはいないし、ヨレてもいない。
なんとか今日一日は生き延びられそうだ。

ふぅと息を吐くと、フローラルのいい香りがふわっと鼻をつついた。

「おはよう陽菜ちゃん!このリスト、朝一で確認してもらってもいいかな?」

香りの主は真由美ちゃんだった。

「あ、おはよう…うん、了解です」

うまく目を合わせられず、言葉も詰まり詰まり。
不自然に思われたかな…と不安に思い恐る恐る顔を上げるが、何事もなかったかのように席に戻っていった。

たっくんの方に目をやると、こちらも変わった様子はない。

じっと見ていたわけでもないのに、一瞬目が合ったような気がして、咄嗟に逸らした。


朝礼が終わり、各々業務に取り掛かる。
デスク上の資料を整理していると、「あっ」と声が漏れた。