上司は優しい幼なじみ

「ううん、何でもない」

「そっか…あ、そうだ。今週末何か予定ある?出かけない?」

私の中のどんよりとした雲が晴れた瞬間だった。

「え!?行く!!行きたい!!」

たっくんと休日デートなんていつ以来だろう。

どこに行くかもまだ決まっていないのに、何を着ていこうか、天気は大丈夫だろうかとか先のことばかり考えている自分がいた。

「陽菜、本当に昔からわかりやすいよな。喜怒哀楽が顔と態度に出やすい」

微笑みながらそんなことを言う。
まるで子供と言われているようで、少しムッとした。

「どうせ私はおこちゃまですよ」

「そんな顔するなって。陽菜の可愛いところだと思うけど」

さらっと’可愛い’なんて言うものだから、その言葉に照れつつ、やはり自分は単純なのだろうと思った。



車が私のアパートに到着し、シートベルトを外す。

「じゃあ、おやすみなさい。送ってくれてありがとうね」

「ん。おやすみ」

部屋に入り、さっそくクローゼットを開いた。
買ってまだ着ていない服、お気に入りの勝負服を鏡の前で自分に合わせる。

こんな姿を見られたら、気が早いなんて笑われるんだろうな。

そんな場面を想像して頬が緩む。

一人ファッションショーは夜遅くまで続くのであった。