上司は優しい幼なじみ

その言葉を理解するのに時間がかかった。
動揺を隠すように、水を一気に飲み干す。

「そう…なんだ」

「元々気になってはいたんだけど、前に仕事でミスしちゃったとき、大川係長がフォローしてくれて。頼もしくて、それ以来ずっと目で追っちゃうの。私、久しぶりの恋なんだ…」

顔を上げた真由美ちゃんの目は、煌びやかに輝いていた。

「あ、あのっ」

---大川係長と付き合っているの。
---諦めて。

’私が好きになる人には相手がいるんだ’

悲しそうに明かしたあの時の真由美ちゃんの顔を思い出してしまう。

「あのね真由美ちゃ---」

「でもね」

本当のことを伝えようと思ったけれど、真由美ちゃんの言葉に遮られる。

「でもね、また恋するの、怖いなって思う自分もいるの。いつもうまくいかないし」

「真由美ちゃん…」

「このまま恋、続けてもいいかな?」

寂しそうな表情で、私を見つめた。

…私にその恋を止める権利はない。

「ダメな恋は、ないと思う」

気づけばそう言葉を口にしていた。
真由美ちゃんの顔はぱっと明るくなり、耳元のピアスが揺れる。

「ありがとう陽菜ちゃん。私、頑張ってみるね」

私は何も返すことができなかった。