「岡田さん、ちょっと来てくれる?」
歓迎会から早数週間。
一時落ち着いた仕事もまた忙しくなってきた頃。
たっくんに呼ばれ、作業中のエクセルデータを上書き保存し、席を立った。
「係長、何でしょうか」
「これ、軽量化の件でメーカーから素材の選定の依頼が来たんだ。明日の午後スケジュール入れてあるから、一緒にやろう」
ホチキス留めされた薄めの資料を手渡した。
「はい!わかりました」
資料を受け取り席に戻ろうとすると、「岡田さん」と引き留められる。
「…?」
「これ、付箋付け忘れたから」
そう言って四角い緑の付箋を一枚差し出した。
その内容をまじまじと見つめる。
’帰り、駐車場で待ってて’
ぱっと顔を上げ、彼の顔を見る。
含み笑いをしながら、たっくんは自分の業務に戻った。
付箋を両手で持ち、しばらくその場に立ち尽くした。
付箋…。入社したての頃、初めてたっくんと二人でご飯を食べに行く約束をしたときも、こうして付箋でメッセージをくれたっけ。
嬉しくなり、その付箋をぎゅっと握りしめる。
たっくんに大きく一礼して、席に戻った。