上司は優しい幼なじみ

「あ、トイレなら空いてるみたいだよ」

「え?」

「トイレしに来たんじゃないの?」

するとたっくんは、はぁと深いため息をつく。

「…全く。しばらく俺を避けてるかと思ったら、ケロっとしやがって」

小声でぼそっとつぶやかれたため、内容が聞き取れなかった。
「何?」と聞き返すが、話を逸らされる。

「とりあえず、大丈夫そうでよかったよ。帰りは俺も一緒に行くから、一人でふらっといなくなるなよ?」

それだけ言い残し、席に戻っていった。
ぽつんと取り残された私は頭を回転させる。

えーと、一緒に帰れるってことで、いいのかな?


遅れて私も席に戻る。

「大川と何か話した?」

気づけば半田さんは焼酎を頼んでいたようだ。
爽やかな顔に似合わず、思わずぷっと吹き出してしまった。

「え、笑った?」

「いえいえ、なんでも」

私の返しに元気が取り戻されたようで、半田さんは「安心した」と笑った。