上司は優しい幼なじみ


あの後、たっくんに呼び出された。
フロアを出た角で立ちながら今朝の話をされる。

「…君も最後まで一緒にやった方がよかったんじゃないか?」

おそらく、途中で抜け出したことを言われているのだろう。

真由美ちゃんから聞いたが、あの後二人で準備をしたらしい。
密室の空間にあの二人で…考えるだけで胸が苦しくなった。

どうしてもあの場にいたくなくて出ていってしまったが、少し後悔していた。
謝ったとは言え、上司に掃除手伝わせてコーヒーも中途半端な状態で投げ出して。

確かに、よくない態度だったかもしれない。

「まぁ俺も、普段は準備されたコーヒーを頂いている身だから変なことは言えないけど。岡田さんが溢した分、粉が減ったから宮田さんが総務に発注するよう頼んでくれたよ」

「…そう、ですか」

どうしてそんなことわざわざ言うのだろうか。

真由美ちゃんのフォローには心から感謝している。

私もあんな風に動ける人間になりたくて、早めに出社して頑張ろうとした。
ちゃんとできなかったのは手際の悪さや要領の悪さのせいであり、自分の責任だけど、たっくんには私と真由美ちゃんを比べるようなことは言ってほしくない。

「…申し訳ありませんでした」

再度頭を下げ、戻っていいとも言われていないのに、トボトボとその場を離れた。