真由美ちゃんの仕事ぶりに感化された私は、翌日いつもより早めに出社して給湯室にこもった。
昨日コーヒーの作り方を教わったから、今日は私が頑張ってみよう。
メモを取り出し一つ一つ慎重に進めていく。
ペーパーフィルターをセットする。
コーヒーの粉は昨日で切れてしまったのか、まだ未開封の袋しか見当たらなかった。
両面からつまみ開こうとするも、びくともしない。
少し力を入れ、ぐっと引っ張った瞬間、コーヒーの香りが一気に充満し、思わずせき込んだ。
「ごほっごほっ!…うわっ!!」
床に散らばる粉。粒子がまだ空気中に浮遊している。
…やってしまった。
どうしてこうもうまくかないのだろう…
がくりと肩を落とし、床の掃除を始めようとした。
「…あれ?何してるの?」
頭上から心地いいトーンの声が降ってくる。
顔を上げると、目をまるくしたたっくんが給湯室に入ろうとしていた。
「あ…おはようございます」
「どうしたこんなに散らかして」
私と同じ体勢になり、一緒になって掃除を始める。
情けなさ過ぎて目も合わせられない。
「コーヒーを…作ろうとしまして」
「…コーヒー?」
すると、そこにもう一人やってきた。
「あれ?大川係長に、陽菜ちゃん?」
真由美ちゃんにも情けない姿を見せてしまう。



