上司は優しい幼なじみ

自分の手元を見た。
私はというと、自分の分のコーヒーだけ。

もう一度彼女に目をやる。

「…すごい」

小さな声が漏れた。
私は本来、こうあるべき姿だったのかな?


業務中、誰かが印刷して用紙切れの音がピーピー鳴る。
印刷した人が面倒くさそうに舌打ちをしながら立ち上がろうとすると、「私やります!」と、真由美ちゃんが手際よくコピー用紙を補充した。

来客があると、誰よりも早く率先して対応と飲み物の準備をする。

テキパキと動く彼女のその仕事ぶりに圧倒された。


「陽菜ちゃん、これ複合機に残ってたよ」

そう言って手渡されたのは、先ほど私が印刷したデータ分析の資料だった。

「あ、ありがとう…」

どうして私が出したものだってわかったのだろう。
自席に戻っていく彼女の後姿をぼんやり眺めながら、そう思っていた。

「凄いね、宮田さん。たぶん、まだこっちの業務が少ないから色々率先してやってくれているんだろうね」

「な、なるほど…」

山本さんも感心したように言う。
同い年なのに、ここまで周りへの配慮ができる。
私なんて、まだまだだ…