上司は優しい幼なじみ


*

翌日、出社して給湯室に行くと、真由美ちゃんがコーヒーの準備をしていた。

「真由美ちゃん、おはよう」

「あ、陽菜ちゃん!おはよう!」

慣れた手つきでコーヒーマシンを操作している。
ふんわりと優しい香りが鼻をくすぐった。

「真由美ちゃん、コーヒー作れるの!?私やったことなくて…教えてもらっていいかな?」

いつも、どこかの誰かが作ってくれたコーヒーをありがたく頂戴していた。
任せきりにするのではなく、自分もできるようになりたいと思った。

「え~全然難しいことないから教えるも何も!」

そう笑いながら、準備の仕方を一から教えてくれた。
反射的にメモを取り、その姿を見てまた笑われる。

「私が業務教えてるみたいで変なの!」

「あはは。なんか、癖で。私忘れっぽいし」

無事にカップにコーヒーが注がれた。

真由美ちゃんは何カップも用意し、順に注いでいく。

「あれ?今日朝から来客あったっけ?」

「ううん?」

その返答に私は首を傾げた。
真由美ちゃんはおぼんを取り出してそこにカップを並べていく。

「行こうか!」

並んでフロアに戻ると、たっくんや日高部長が出社していた。
彼女はたっくんのデスクに歩み寄り「おはようございます」とカップを置く。
次に日高部長にも同じように。

よく見ると、出社している人にコーヒーを配りまわっている様子だった。