上司は優しい幼なじみ

「じゃあ、今まで既婚者の人とか彼女持ちの人とかと、実際に付き合うってところまではいかなかったんだ？」

そう言うと、スープを一口飲んで一泊置いた。
その間に、私は色々と察する。

「…私からそういう関係を迫ったことはなかった。全部向こうから。’離婚した’’別れた’って言われたから付き合ったのに、実際にはまだ縁が切れていなくて大変だったことはあるかなぁ。どうしてだろうね？相手がいる男の人の方が、魅力感じるのかな！」

「それは…大変だったね」

こういう場合、なんて声を掛けたらいいのかわからない。
不倫や浮気は世間的には悪とされている。
私も、いけないことだと思っている。

でも、’好きになるな’って言える人はいるのだろうか。
現に私も、もしたっくんがまだ山本さんと付き合っていたとしても、彼を好きになっていただろう。
’好きになるな’なんて言われたら、きっと悲しくなるに違いない。

「はー、なんか、職場の人にこんな話したことなかったから、すっきりした！同い年の陽菜ちゃんがいて本当によかったよ。さぁ食べよ食べよ！」

いつの間にかパスタがテーブルに並べられていた。
そのあとは仕事の話で盛り上がり、店を出てオフィスに戻った。