「大川っていつのまにか岡田さんにべた惚れだったんだな」

「うるさい半田」

たっくんが…私にべた惚れ…?

まさかそんな状況になるなんて、入社したばかりの頃は想像もできなかった。


そのあとの話題は半田さんの過去の恋愛の話で持ち切りだった。
どうやら、酷いフラれ方をされた経験があるそうで。
それ以降も告白されて付き合ったことはあるけれど、気づいたら別れを告げられているらしい。

途中から泣き出したのは驚いた。
可愛そうになり半田さんの背中をさすると、隣のたっくんは「ほっとけ」と冷たくあしらう。

私よりも酔っ払っているよ…半田さん。


「半田、一人で帰れるのか?」

「えー二人とも来てくれるんじゃねーのー?」

半田さんはたっくんの肩に手をまわし、体重をかける。

「おまっ、重いって離れろ」

「冷てーなー。岡田さんは来てくれるだろー?」

「え、えっとぉ私は…」

返事に困っていると、たっくんは私の手を握った。
大きくて温かい手に包まれ、心拍数が上がる。

「悪いけど俺ら帰るから。あ、タクシー」

私の手を握る反対の手をあげ、ちょうどいいタイミングで通りかかったタクシーを止める。

自動で後部座席のドアが開かれ、たっくんは無理やり半田さんを押し込んだ。

「すみません、M駅まで。半田、そっからは自分の口で説明できるよな?」

そう言いながら一度私の手を放し、ポケットから財布を取り出して一万円札を半田さんに握らせた。