「え?知らないの?岡田さん男性社員から結構人気あるんだよ?」

「…へ?」

知らない。そんなの聞いていない。

「綺麗系の山本さん、可愛い系の岡田さん。二人がペアで仕事しているから一石二鳥だなーって話、よくしてたっけな。な?大川」

半田さんの目がたっくんに移り、その目線を追うかのように私も彼の方を見た。
腰に回されていた手がゆっくりと離れ、たっくんはワインを一口飲む。

「そういう話は…まぁ聞いたことある」

ぼそっと小さくそう言った。
確かに山本さんは美人で噂されるのはわかるけど…私?うーん…不思議だ。

「そしたらさ、大川のやつ。そいつらに向かって’同僚をそんな風に見るな’って言ったんだよな?」

半田さんはグラスを持って席から立ち、たっくんの肩に肘を乗せるような体勢をとる。

「当然だろ?学校じゃあるまいし」

「ほー。さすが大川。デキる男って感じだな」

陽気な半田さんと、冷静なたっくん。
両極端だけど、それが本人たちには心地いいのだろう。

「陽菜」

「あ、はい」

「…ふらふらすんなよ?」

「…ん?は、はい」

何のことかわからなかったが、とりあえず頷く。
そんな私を見て、たっくんはため息をついた。