上司は優しい幼なじみ

「た、たっくん。人が見てるよー…」

こそっと耳打ちをするが、更にしかめっ面になる。

「陽菜は隙作りすぎ。昔から危なっかしいところあったけど、そこは今も変わらないな」

「なっ!!」

私たちのやり取りを、半田さんは頬杖をつきながらニヤニヤと見ていた。

「いいなー。俺も可愛い幼馴染いたら人生楽しかったろうなー」

半田さんはウィスキーのロックに口をつける。ボールアイスがグラスの中で揺れ、カランと音を立てた。

「半田さん、モテるでしょ?」

「俺?いやー。しばらく彼女いないし…」

「えー。モテると思ったのになぁ」

たっくんに腰を抱き寄せられたままの状態で、腰に回された手の指でつんつんとわき腹をつつかれた。
彼の方に顔を向けると、ジト目で私を見ていた。

たっくんて…意外と嫉妬深い?

「いいよなー大川は。美人な山本さんの次は可愛い岡田さんかー」

「わ、私は決してそんなんじゃありません!可愛くなんてありません!」

項垂れる半田さんに全力で否定した。
私は昔から、クラスのマドンナ的存在の女子を遠くから’可愛いなぁ’と思いながら眺めていたモブの一人だった。
爽やかイケメンにお世辞でもそんなことを言われると恐縮する。