上司は優しい幼なじみ



「…オリジナルカクテルです」

無精ひげを生やしたダンディーな男性が、私の前にグラスをそっと置いた。
’オリジナルカクテル’と呼ばれるその中には、小ぶりなチェリーが存在感を出している。

右をちらっと見る。
キリッとした眉に筋の通った鼻。ワックスで整えられた短めの黒髪。
よく見ている横顔。

左をちらっと見る。
綺麗な並行眉に、くるっと上向きの睫毛。トップにボリュームを出したヘアスタイル。
そういえば、横顔はあまり見たことないかも…

「どう?うまいっしょ」

左の彼が嬉しそうに話しかけてくる。
二人のお酒が出されるのを待っていたから、まだ口をつけていなかった。

「いえ、まだお二人の来てないので…半田さんの行きつけなんですね。こんなおしゃれなバーがあるの初めて知りました」

たっくんがフロアに戻ってきたあの後、半田さんの発案で三人でバーにやってきた。
「居酒屋だと岡田さんが危険」なんて言われたもんで、すっかり嫌なイメージがついてしまったようだ。

「大川とはたまに来るよな?」

身を乗り出し、私の右隣のたっくんに声をかける。

「そうだな。俺も半田から教えてもらって、一緒に来ることもあるしたまに一人で来ることもあるんだ」

私はお酒を飲むのは居酒屋ばかりで、こういった大人な空間は初めてだった。