上司は優しい幼なじみ


最近、山本さんが担当していた業務を私が引き継ぐことになった。
初めて関わることに関してはサポートとして一緒に作業することもあるが、その他はほぼ一人で行っている。

こんな量を一人で裁いていたのか…と、山本さんの仕事の手際の良さを改めて実感する。

今日も少しだけ残業。
山本さんが「手伝うよ」と言ってくれたけれど、一人でできない量ではなかったので、どうしても頑張りたくて遠慮した。

周りを見渡すと、私一人。
たっくんの席にはまだ荷物があるから、どこか行っているのだろう。

付き合ってから会社で顔を合わせることがほとんどで、プライベートの時間はあまり共有できていない。
それでも、仕事も充実しているから、傍にいれるだけで十分だけど。

すると遠くからバタバタと走ってくる音が聞こえる。
その音はだんだんと大きくなり、やがてフロアのドアが激しく開いた。

「あれ?半田さん?」

その音の主は半田さん。肩を上下に大きく揺らしながら、私と目が合い「おぉ」と言いながら入ってくる。

「どうかしたんですか?」

「いや、スマホ忘れたみたいで…」

自席でガサゴソと物をあさり、「あった」と私に嬉しそうにそのスマホを見せてきた。
まるで子供みたいに可愛らしく、ふっと笑ってしまう。