上司は優しい幼なじみ


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動画撮影当日。たっくんの車に身を預け連れてこられた先は、撮影用の貸倉庫。
そこには一人暮らしの女性の部屋が演出されたセットがあり、既に限定商品の家具が綺麗に配置されていた。

「わぁ…すごい…」

撮影関係者もかなりいて、この人たちが社内の人なのか、社外の人なのかもわからないが、たくさんの人が携わっているんだと改めて実感する。

その光景に圧倒されていると、一人の若い女性がこちらに近づいてきた。

「岡田さん…ですか?初めまして。私、広報部の宮田 真由美(ミヤタマユミ)と申します。今日はよろしくお願いします」

「あ、よろしくお願いします。商品企画部の岡田 陽菜です」

背丈は私と同じくらい、丸顔で細めのたれ目が柔らかい雰囲気を醸し出す。
肩に着かないくらいのボブを緩く巻いており、小型犬のような可愛らしさがあった。

「岡田さん」

遠くで関係者と打ち合わせをしているたっくんに呼ばれる。

「今行きます」と声を張り、宮田さんに軽く会釈をして彼のもとに小走りで駆け寄った。