上司は優しい幼なじみ

会議が終わり、明日のスケジュールの確認の為、私とたっくんだけその場に残った。

「…随分と表情固まってたけど、緊張してる?」

私の前にスケジュールが書かれたA4の紙を差し出す。

「そんな…公式動画とかSNSとかに載るものだと思わなくて…ちゃんとできるか不安です」

「普段と同じように生活している風景を撮らせてもらえればいいんだ。前も言ったけど、君はうちのターゲット層の等身大に一番近い存在だから。演技は必要ない、普段通りで大丈夫」

「…頑張ります」

紙に目を通すと、撮影場所や注意事項、服装について書かれていた。

服装は、フリースタイルの店員と同じようなカジュアルな服、と書かれている。
よくお客さんとしてお店に行っていたから、大体どんなイメージかは想像ついた。
なおかつ、そのまま出社できそうな恰好の方がいいだろう。

「明日一度会社に来て、俺の車で現場まで行くから、そのつもりで」

「はい、わかりました」

まるで芸能人になったかのような気分だ。
伸びる鼻をへし折り、いけないいけないと、頭を横に振る。