「たぶん知ってるかもしれないけど、昔私たち付き合っていてね。だけど今はお互い仕事仲間としか思っていないから、気にしないでね?」

今までの悩みや劣等感を、山本さん本人が少しずつ取り除き、安心を与えてくれる。
箸をそっと置き、背筋を伸ばした。

「実は、お付き合いすることになりました。会社では当然、上司と部下という関係で、特別扱いとかは一切しないっていう決まりがあるので。皆さんにご迷惑はおかけしないよう努めます」

すると、山本さんはふっと微笑む。

「そっか。そういうの彼は得意だから、岡田さんがしっかり守っていれば会社での関係性もうまくいくと思うよ」

「はい、半田さんから色々聞きました。お二人が付き合っていた時、あまりにも自然すぎて言われるまでわからなかったって。私なんて意識しすぎていて…しっかりしないとなぁって思います」

「まぁ、岡田さんの可愛いところでもあるから。無理しすぎないようにね」

山本さんの言葉ひとつひとつが胸に染み渡る。
そのあと話題を変え、いつまでも話が盛り上がるのだった。