上司は優しい幼なじみ

気持ちを落ち着かせようと、持っていたコーヒーを一気に飲もうとした。

「あっつ!!」

自分が猫舌なのを忘れていた。
いつもなら温かいものを飲むときは冷ましてから飲むのに、今回はその工程をすっかり忘れてしまっていた。

慌ててペーパーナプキンを数枚取り、床にこぼしたコーヒーを拭く。

「あはは、相変わらず、熱いのは苦手なんだね」

「…え?」

思わず手を止め、顔を見上げた。
彼は私と同じ目線まで腰を落とし、一緒になって床を拭く。

相変わらず?どうして私が熱いものが苦手だってことを…

手を止めたまま何も理解できずにいると、係長はふっと微笑み内ポケットからカードケースのようなものを取り出した。

「かなり久しぶりだし、もう忘れちゃったかな?」

その中から一枚の紙を取り出し、私に差し出した。
どうやら、名刺のようだ。

そこに書かれた名前を見た瞬間、あんぐりと口が開いた。


株式会社フリースタイル
商品企画部 係長
大川 拓海