上司は優しい幼なじみ

呼び出し番号に私たちの番号が表示された。

「私、とってくるね!!」

「待って、俺が行くから」

立ち上がろうとする私を言葉で制す。
「これくらいできるよ」と頬を膨らませるが、「滑ったら危ないだろ」と返された。

どうやら、まだ子供に思われているみたい。

おとなしく席で待っていると、いい香りとともに目の前に牛丼が現れた。

「ありがとうね」

「これくらい全然」


しばらく黙々と食べ進める。
その沈黙を破ったのはたっくんだった。

「最近さ、半田と仲良くしてるの?」

予想外の人の名前。
うーんと頭を悩ませる。

あれは仲がいいというのだろうか?
だけど、話しやすいし飲みに行ったこともあるから、仲いい…のかな?

「そう…かも?色々相談乗ってくれるから」

「…そっか」

気難しい表情を見せる。
何か問題があったのだろうか…

「たっくん、どうかした?」

すると、私と交わった目線が大きく揺らいだ。

「あ、いや…ほら、陽菜がめちゃくちゃ酔って俺が迎えに行ったとき。陽菜が俺を半田だと思って結構スキンシップとってきたからさ」

「あわわわ!それは!!」

忘れたい醜態が脳内でループする。

今日出社してから半田さんに「大丈夫だった?」って聞かれたけれど、いろいろと大丈夫ではなかった。
それを隠すかのように「大丈夫でした!」と言いつつ、迷惑をかけてしまったことを謝罪した。

「陽菜さ、危なすぎ」

急に真剣な表情になり、まるで業務中かのように私は背筋を伸ばした。

「と、言いますと…急性アルコール中毒のことでしょうか」

あれだけ飲んだらその危険性は出てくる。
たしかに、危なすぎる行為だ。

「いや、そうじゃなくて…まぁそれもあるけどさ」

言葉を濁すたっくん。再び牛丼に手をつける。