上司は優しい幼なじみ

午後の業務も半ばを迎え、ずっと座りっぱなしで画面を見すぎた体を少し休めようと思い、午前中に山本さんに案内された給湯室に向かった。
恐る恐る中を覗いてみると、誰もいなかった。

慣れない手つきでコーヒーを入れる。
こういうコーヒーの準備って、いったい誰がしているのだろうか。
おそらく事務の女性なのだろうけど、もし私もやることになって、みんなに満足してもらえるコーヒーを作ることができるのか少し不安だ。
そもそもコーヒーをドリップした経験がない。

そんなことを考えていると、給湯室にもう一人やってきた。
その人物を認識した瞬間、心臓が止まりかけた。

「か、係長。お疲れ様です」

「お疲れ様」

先ほどまで思い出を巡らせていたたっくんと似た笑顔の係長。
ただでさえ長身イケメンなのに、そこにたっくんのフィルターがかかると二倍緊張する。

「座りっぱなしも大変でしょ?でもまぁ最初のうちだけだから。しばらくしたら各店舗や同業他社の店舗に調査に行くことになるよ」

「ほ、ほぉ」

ただ仕事の話をしているだけなのに…やはり二人きりというのも緊張するな。