エレベーターが目的のフロアで止まる。
開くと品のよさそうな30代くらいの女性が立っていた。
「いらっしゃいませ。ご案内いたします」
応接室に案内されると、白髪交じりの髪をワックスでオールバックにしている男性の姿が。
「社長、フリースタイルの方がいらっしゃいました」
無精ひげを生やした口角を上げて立ち上がる。
「大川さーん、お無沙汰しております」
「高山社長、先日はどうもありがとうございました」
がっちりと握手が交わされるその一歩後ろに立つ私。
’高山社長’と呼ばれるその男性が後ろの私をちらっと見る。
「おや?そちらの若い女性は?」
「紹介します。弊社商品企画部の岡田です。岡田さん、こちらは社長の高山さん」
「これはこれは、可愛らしい方が入ったんですね~!おっと、これはセクハラ発言になるのかね?」
ガハハと口を大きく開けて笑う社長さん。
ほんのりとタバコのに匂いがして、喫煙者なのだとわかる。
「岡田と申します!宜しくお願い致します!」
深く頭を下げると、たっくんが小声で「手土産を」と囁く。
手に持っていた紙袋を、一歩前に出て差し出した。
「あの、こちらよかったら召し上がってください」
それを見た社長さんは目を輝かせた。
よほどこれが好きなのか。



