上司は優しい幼なじみ

車内とはまた違った二人きりの空間。
階数を表示する画面の隣に小さなモニターがあり、会社紹介の動画が流れている。

「あの…今日はどういった用件で?」

するとたっくんはカバンから資料を取り出し、私に差し出した。
それを見て驚いた。なんたって、私が以前プレゼンに使った資料だったから。

「これって…」

「結果的に商品化には至らなかったけれど、軽量素材の家具っていう視点は素晴らしいと思ったんだ。ECサイトのリニューアルに際して、限定商品を出すのはもちろん、既存商品もいくつかリニューアルとして軽量化の話が上がっていてね。その件で、このメーカーに来たんだ」

その言葉に、涙が出そうなほど嬉しかった。
プレゼンで山本さんに負けてしまったのは悔しかったけれど、こうして私が提案した内容が一部でも会社の為になったのだと思うと、この上ない喜びだ。

「あ…ありがとうございます!!」

嬉しさと同時に、こうやって評価してくれていたのにプレゼンの後当たるような態度をとってしまったことを深く反省する。
たっくんは、頑張りをしっかり見て評価してくれる素敵な上司だ。