上司は優しい幼なじみ

「嫌じゃ…ないです。頑張ります」

「よかった」

しばらく車が走り続けたどり着いたのは、大手家具メーカー。
何年も前からうちと取引がある、厚い信頼関係を築いている会社だそうだ。

警備員の誘導で来客用の駐車場に車を止めた。

「悪いんだけど挨拶用の手土産、持ってもらっていい?」

そう言われ、後部座席から紙袋を持ち出す。
何だろうとまじまじ見るが、しっかり包装されていて中身はわからない。

「老舗の饅頭。ここの社長さんの好物なんだ」

「毎回こういうの持っていくんですか?」

「俺が直接顔出すときは持っていくよ。これあるとスムーズに話が進むんだ」

いたずらっぽく笑うその顔に、胸が高鳴った。
いけないいけない、今は仕事中…


初めての客先訪問に緊張する私とは違い、さすが慣れているたっくんは涼しげな顔。
広い駐車場を進んだ先にオフィスの入り口があり、これまた慣れたように受付嬢と会話を済ませ、エレベーターに乗り込んだ。