上司は優しい幼なじみ

駐車場に向かい、会社用の車に乗り込む。
たっくんの車とはまた違った匂いがする。

車が動き出し、少ししたところで私は口を開いた。

「あ、あの…動画の件なんですが…どうして私なんでしょうか?」

顔はあまり映さないにしても、私なんかじゃ華がないというか…表に出るなら山本さんの方が合っている気がした。

「…前に君の部屋に行ったとき、ピンと来たんだ。一人暮らしをする女性の等身大になれるのは、岡田さんだって」

「等身大?」

赤信号になり、車がゆっくり止まったところでたっくんはハンドルから手を離した。

「商品PRの為の写真とか動画って、あくまでも商品を引き立たせるものなんだ。俺、君が何考えてるのかわかるよ?自分なんかより山本さんの方が…とか思ってるでしょ?」

「うっ…」

痛いところつかれた。まさにその通りだ。
私を出したところで何の面白みもない。

「商品より人が目立ちすぎたらダメなんだ。前も言ったけど、社内で今一番消費者に近い存在なのは岡田さんだし、良い存在感出してくれると思ってね。こういうの、嫌だった?」

車に乗って、初めて目が合った。
その目の奥には優しい’たっくん’と仕事熱心な’大川係長’を感じる。