椅子に腰かけ、コンビニ袋の中身をあさると、おにぎりやサンドイッチやら、きっと選択肢をいろいろ私に与えてくれたんだろうと思わせるような、多くの種類が入っていた。

その中からおにぎりを2つ取り出し、一緒に入っていたペットボトルのお茶の蓋を開ける。

「ん…おいしい」

おにぎりを食べながら、ぐるりとあたりを見渡す。
生活感があまりない部屋。
ここが…たっくんの部屋。

小さいころ、お互いの実家の自分の部屋に行き来したことはあるけれど、それでも子供部屋だ。
あの時はたっくん、ミニカーとか小さなプラモデルとかを集めて飾っていたっけ。

懐かしい記憶がよみがえり、ふと笑みがこぼれる。

大人になったたっくんの部屋は、そういった玩具は一切なく、落ち着いた大人の男性の部屋といった感じだ。

山本さん…来たことあるのかな。
まぁ、あるよね。長く付き合っていれば。

私がいたあのベッドで、二人は…


「…って!!何妄想してるの!!そんで何勝手に落ち込んでるの!!」

よからぬ想像を繰り広げようとしてしまった自分の頭をゴツゴツとおにぎりを持っていないほうの手で叩く。

残りのおにぎりを口に詰め込み、コンビニ袋の下にメモを挟ませた。

’おにぎりとお茶いただきました。
おいしかったです!ありがとう!’

シャワーを借り、急いで身支度を済ませる。
クレンジングや洗顔料、化粧水のサンプルを毎日持ち歩いているおかげで一度顔をすっきりさせることができた。
メイク道具はお直し用に簡単なものしか持っていないから最低限の仕上がり。

スマホを開くと、たっくんからメッセージが届いていた。

’最寄りの駅までの地図。最寄りは〇〇駅’

地図アプリに切り替え、道のりを確認する。
たっくんから預かったカギで戸締りをして部屋をあとにした。