上司は優しい幼なじみ


私の飲むペースは止まることを知らず、気づけば8杯は飲んでいた。
辛うじて意識はあるものの、ふわっとした気分から抜け出すことはできない。

「半田さんって~素敵な人だなって思うんですけど、彼女いないなんておかしいですよ~」

ベロンベロンの状態の私を心配そうに見るその目に、たっくんの姿を重ねてしまう私は重症だ。
驚くことに、半田さんも独身だそう。

背丈はたっくんとほぼ同じくらいで、短髪の塩顔イケメンの半田さん。
今まで彼の女性関係を気にしたことがなかったが、こういう場だとどうしても興味本位で聞いてしまう。
とは言っても、アルコールのせいというのもあるのだけれど。

「ちょーっと飲ませすぎたな…」

ぼそっとそう言った半田さんは席から立ちあがり、ポケットからスマホを取り出して誰かに電話を掛けながら離れていった。
そんな姿をぼーっと目で追い、急に眠気が襲ってきてそのまま机に突っ伏す。

しばらくすると店のドアが開き、半田さんが戻ってくるのが分かった。
酔っていて視界がぼやけているせいか、半田さんの姿が二重に見える。

「半田さーん、おかえりー」

もはや先輩に対する口調、態度ではない。
こんなところたっくんに見られたら、いくらなんでも社外とはいえ、怒られそうだ。