上司は優しい幼なじみ

「そう。岡田さん若いし、そういう子がうちの戦力になってくれるのは本望だよ。どう?うちでやっていけそう?」

係長の声が上から降ってくる。
顔を上げるとばっちり目が合った。
この距離でこう目が合うのは、今朝のエントランスで挨拶した時以来だ。

「あ、はい!日高部長も山本さんもとてもいい方で。仕事も楽しいですし…私、もともとこの会社の商品が大好きだったんです。だから楽しいです。食堂のご飯もおいしいですし」

そういうと、係長はもともとたれ目の目じりを更に下げ、微笑んだ。
その顔に一瞬、ある人が脳裏に浮かんだ。
笑った顔が、あの人に似ていた。




…そう、あれは15年前。
私が年長さんの頃からかわいがってくれていたご近所さんの息子さんに、拓海くんという4つ上の男の子がいた。
物心ついたときから一緒に遊んでくれていて、私にとってお兄ちゃんのような存在だった。

私には2つ下の弟がいて、いつも親には「陽菜はお姉ちゃんなんだから我慢しなさい」とか言われて弟に譲ることが多かった私は、上に兄弟がいたらいいな、たくさん甘えたいなと思っていた。

そんな私にとって、拓海くん…たっくんとの出会いはとても大きなものだった。
4つも上だから、私が小学校高学年になったころにはたっくんは中学生で。
勉強も運動も頑張っていたたっくんは忙しくなってしまい、前より遊べる頻度も少なくなった。