上司は優しい幼なじみ


待ち合わせの居酒屋に着くと、すでに半田さんの姿があった。
「急いで仕事終わらせてきたよ~」といつもの笑みを浮かべる。

席に着き、半田さんはビール、私は度数高めの得体のしれないリキュールを頼んだ。

「え、大丈夫?初っ端こんなんで」

「いいんです!今日はとことん付き合ってくださいね!私、心がボロボロなんですから!」

プレゼンでは山本さんに負け、プライベートでも山本さんに負けたようなもの。
山本さんを恨んでいるわけではない。逆に恨むことができたらどれだけ心が楽になるだろうか。

運ばれてきたお酒で乾杯する。
私はたしなむどころか半分まで一気に飲んだ。

グラスをガタンとテーブルに置く。
そんな姿に半田さんはギョッとしている。

「半田さん!私、たっくんにフラれちゃいました!!」

すると半田さんは目を丸くした。

「え、もう告ったの!?」

「告白するつもりはなかったんです…でも、どうしても感情が抑えきれなくて…思わず」

「フラれたって、何て?」

そう言われ、非常階段でのやり取りを思い起こした。
惨めな自分と、そんな私を困った顔で見るたっくん。
思い出すだけで胸が苦しくなる。