上司は優しい幼なじみ



「えー、二人とも、見事でした。特に山本さん、君の発案には毎回驚かされるよ」

「やめてくださいよ部長!」

プレゼンを終えた私たちは一旦通常業務に戻り、しばらくしてから再び会議室に呼ばれた。
この反応からして、結果はわかりきっている。

「次回のシーズンでは、山本さんの案を採用し、商品化を進めていこうと思っています」

そう口にしたのは、係長であるたっくんだった。

「ありがとうございます!」

隣に立つ山本さんは元気よく頭を下げた。
私は棒立ちのまま、目線を床に落とした。

「いやー、消費者の反応が楽しみですね」

「至急、他の工場とも連携をとっていく必要ありますね」

まるで置いてけぼりにされているような状況で、周りはどんどん話を進めていた。
私もいるのに…頑張ったのに…

周りの目は山本さんにしか向いていなかった。
彼女に拍手が送られ、私も二泊おいて遅れて手を叩く。

でも、いてもたってもいられなくなり、私は会議室を飛び出していた。

非常階段の重いドアを開け、視界が涙でぼやける中、駆け降りる。

踊り場の数段上のあたりでつまずき、思い切り倒れこんだ。

「うっ…私って、バカみたい」

そもそも選ばれなかったからって、途中で抜け出すなんて社会人として失格だ。
こんな姿、たっくんに見せたくなかった…