上司は優しい幼なじみ

「は、はい…明日はリベンジマッチなので」

「ははっ。リベンジか。そんな風に思ってたんだね」

たっくんは笑いながら空いている隣の山本さんの席に座った。
山本さんの席ってわかって座っているのか、たまたま隣に座ろうとしたのが山本さんの席だったのかはわからないが、久々のこの距離感に今まで必死に抑えようとしていた感情が溢れそうになった。

「絶対に…成功させたいんです。だって、私は係長に認めてもらいたいから」

「…認める?」

キョトンとした表情を見せた。
言ってすぐあたふたと慌てだす。

「あ、いえ!えーと…ほら!係長に、私が成長した姿を見てもらいたくて!いつまでもおこちゃまじゃないんだぞ!って」

身振り手振りを交えて必死に弁解していると、動かした肘が山積みの資料にあたり、それが雪崩のように崩れ落ちた。
その衝撃でデスクに置かれたコーヒーが無残な姿となってしまった。

「あ、あぁー!!!!!!」

資料に茶色いシミがじんわりと広がる。
幸いにも、シュレッダーにかけるつもりだった不要なものだったから、それはまだいい。
それよりも、せっかくたっくんが淹れてくれたコーヒーを一口も飲まず台無しにしてしまったことを悔やむ。