『もしもし。』

夜、私の電話に 亮太は 少し照れたような 優しい声で出た。
 
『ごめんね、リョウ。ごめんなさい。』

私はいきなり謝る。

亮太は、クスッと笑って
 

『もういいよ。』と答えた。
 
『私、リョウの気持ち わかっているのに。素直になれなくて。ごめんなさい。すごく反省している。』


私は必死で言う。

亮太が『もういいよ』と言った時、私は ハッとした。


亮太は もう終わりだから どうでもいいと 思っているのかもしれない。
 


『俺も 反省したから。ヒロの 言う通りだった。全然、デートもしなくて。俺も、ごめんな。』


亮太は 優しく言う。

私の頬を涙が伝う。
 


『ううん。リョウは 悪くないよ。私が、美佐子のことで 意地になっていただけだから。』

涙を堪えると、言葉に詰まる。
 
『ヒロ、泣いているの。』

亮太は茶化す。
 
『だって。別れようって 言われるかと思ったから。』

私は鼻をすすって言う。
 


『言うかよ。俺、お前には 勝てないの。』

亮太は楽しそうに言う。
 
『何、それ。』

私が聞き返すと
 
『いいの。それよりヒロ 明日 初詣行こうよ。』

亮太の明るい声に、私は安心する。
 
『うん。おみくじ引きたい。』

私は 少し甘えた声で言う。
 


『待ち人来るか?俺、凶だったら 嫌だな。』

亮太は 不安そうな声を出す。
 
『大丈夫。お正月は 凶とか無いらしいよ。それに』

私は少し、言い淀む。
 
『んっ?』

亮太に優しく聞き返されて
 


『リョウの待ち人は、私だから。』

私は 言ってから 恥ずかしくなる。

亮太は、声を上げて笑い
 

『ほらね。だから俺 ヒロには 負けるんだよ。』

と亮太は言った。
 


『リョウ。会いたくなっちゃった。』

私は、ポロっと言ってしまう。
 
『今日のヒロ 可愛いな。会いに行っちゃう?』


たった2日 会っていないだけなのに。


すごく長い間、会わなかったように 感じたのは 多分亮太も同じだった。