放課後 週番だった私は 職員室に 週番日誌を持って行った。

室内に 木本の姿は 見えない。


私は 木本の机の上に 日誌を置いて、出口に向かう。
 


「あっ。」

職員室の出口で 私は藤田とぶつかる。
 
「さようなら。」

と言う私に
 

「あっ、山口。ちょっといいかな。」

と藤田は私を呼び止めた。
 
「はい。」

と言って私は 職員室を出て 前の廊下で 藤田と向かい合う。
 



「山口、金井は 最近どうだ。」

藤田は 私の好きな、目を細める笑顔で 私に聞く。
 
「金井さんですか。真面目にやっていますよ。」

私が答えると、藤田は 小さく頷く。
 


「金井も、山口のことは 信用しているだろう。これからも 金井の相談に 乗ってあげてほしい。」


藤田の言葉に 私は違和感を覚える。

心の中で 何度か 藤田の言葉を 繰り返す。
 


「どうして。どうして先生が、そんなこと 言うんですか。」

私の中の違和感は 大きく膨れて 爆発寸前だった。
 
「どうしてって。せっかく 復学できたんだから。みんなで 金井を卒業させてやろうよ。」


藤田は、ただの正義感で 言っていたのかもしれない。

生活指導の担当として。


これ以上 美佐子が 悪い事をしないように。

私を信用して 頼んできたのかもしれない。
 


でもその時、私は そこまで考える 余裕がなかった。

藤田は 私を犠牲にして 美佐子を守りたいのだと思った。



爆発する心。