「リョウ、今度の試験 絶対、頑張って。彼女できたから 成績下がったって言われるの 嫌だからね。」


土曜日の午後 駅で待ち合せをして 亮太の家に向かう。

地元だから 少し離れて歩く私を 亮太は引き寄せて 手を繋ぐ。
 

「大丈夫。俺 今回 高校入って 一番勉強しているから。」

と得意気に笑う亮太。
 
「ねえ。誰かに見られるよ。」

私の手を 強く握る亮太に、私が言うと、
 
「いいよ。」

と優しく言う。


私は 自分が認められる嬉しさと 微かな責任を感じて 無口になってしまう。
 
「ヒロ、おとなしいな。緊張しているの。」

茶化すように言う亮太。
 
「リョウのお母さんに 叱られるかもしれないから。」

私が小さく答えると、
 

「何だよ、それ。うちの亮太を誘惑しないで。っていうやつ?」

と亮太は楽しそうに笑う。

私は頷いて
 

「そう。誘惑したのは、リョウの方なのにね。」と言う。

否定して 反論するかと思った亮太は 少し顔を赤くして 頷いた。