「久しぶり、浩子。参ったよ、マジで。やっと携帯、返してもらったんだ。」

学校を休み始めて 八日目の夜 美佐子から 電話が入る。
 


「もう。心配していたんだよ、みんなで。学校、どうなった?」

私は聞く。
 

「一か月の停学。多分、二学期は 学校に行けないかな。丁度、期末と重なるから。」

美佐子は、軽く言う。
 
「停学で良かった。」

私が言うと、


「うん。『ロイヤル』のスタップが 学生を庇ってくれて。初めて来たって、口を揃えて 言ってくれたから。私も玲奈先輩も 停学ですんだの。」

美佐子の口調は 今までと 変わらない。
 

「初めてじゃないじゃん。」

と私が笑って聞くと、
 
「うん。でも、虫の知らせ?あの日は、最初からフロアで踊っていたから。助かったんだ。」

美佐子は 笑いながら言う。



「ねえ、美佐子も 大麻とかやっていたの。」

ずっと聞きたかったことを、私は聞いた。
 

「たまーにね。私、あんまり、ぶっ飛ばないから。面白くないんだ。」

美佐子の言葉に、私は驚いて、

「へえ。ぶっ飛ぶって どうなるの。」

と聞くと、


「宙を舞っているくらい 気持ち良くなる人もいるらしい。気分が良くなって、笑いが止まらなくなったり。」


美佐子の言葉に 私は悲しくなる。
 

こんなに近くで 冗談を言い合い 同じことに笑っていた友達なのに。



やっぱり、私と美佐子の距離は 遠い。
 

しばらく他愛のない話をして
 


「停学終わったら、学校に来るでしょう。」

と私は聞く。
 
「うん、行くよ。これから毎日、反省文だよ。ダルいけど。庇ってもらったからさ。」

美佐子の言葉の どこまでが本心で どこからが強がりか、まだ私はわからなかった。