翌朝 一時間目の前に 私は 担任の木本に 呼ばれた。


生活指導室の中には、木本と信太郎がいた。
 

「金井のことなんだけど。」

二人の前に 私が座ると 木本が言う。
 
40代半ばで 痩せて受け口の木本を 私達は 『ワニ』と呼んでいた。
 

「山口は 金井と仲が良いだろう。校外でも一緒に遊ぶのか?」

木本は 探るような目で 私を見る。
 

「金井さん、T市だから。家、遠いから 学校外で遊んだことは無いですね。」

と私は言った後で
 


「金井さん 昨日から 休んでいますよね。病気ですか。」

と、何も知らない振りをして聞いた。
 
「まだ、はっきり言えないんだけど。金井は、当分、学校には来ないよ。」

木本の返事に 驚いた顔をして 私は信太郎を見る。

信太郎も、無言で頷いた。
 


「何かあったんですか。」

と私が、もう一度聞くと
 


「金井は ちょっと悪いことをして。今、家で待機している。どうせわかる事だけど。あまり広めるな。」


と信太郎は もっともらしい口調で言う。
 
「金井さん、何をしたんですか。」

信太郎だって とても ひどいことを したくせに。


私は強い怒りに包まれていた。