中3の時 亮太と私は、クラスで2人だけ 合格ラインぎりぎりの県立高校を 志望していた。


担任と 何度も面談を重ねて、私は 志望校を下げた。

でも亮太は 不合格を覚悟して 第一志望を貫いた。
 


「俺、兄貴に負けたくないから。」

最後の面談の日。


教室から出て来た亮太は ポツンと私に言う。

亮太に続いて 面談を受けるため 廊下に座っていた私。


いつも明るい亮太の 強い言葉に とても驚いた。
 

「次、山口。」

教室の中から 担任の声がして 私は立ち上がる。

スッと亮太を見ると 笑顔で手を上げた。
 


私は、志望校を 下げる決心をしていた。

これから 担任に話そうと思っていた私は 亮太の強い言葉に 決心が揺らぐ。

亮太を 裏切るような気がして。

何かを 約束したわけでもないのに。
 


「私、桜宮にします。」

担任は、満足そうに頷いて、
 
「桜宮で上位にいれば、良い大学に 推薦してもらえるから。大学で逆転できるよ。」

と言った。



大学なんて。まだ 高校生にもなっていないのに。

そんな先のことを言われても、何の魅力も 感じない。
 


1ランク下げて 望まない高校に合格した私。

意志を貫いて 不合格になった亮太。



二人とも、満足できる結果ではない。


どちらが正しいかなんて、わからない。

私は、不合格を避けただけ。