「金井さん、中学はどこ?」

入学式翌日の朝。

窓際の一番後ろの席。


美佐子は、黙って 外を見ていた。

私は、隣の机に 鞄を置く。

美佐子は、笑顔で私を見た。
 

「T市の西中。」

少し低めの 大人っぽい声で 美佐子は答える。
 
「美佐子でいいよ。誰だっけ?」

と私に聞く美佐子。
 
「山口浩子。私も 浩子でいいよ。私は 2中出身なの。」

私も答える。
 
「へえ。市内なんだ。」

美佐子と話す私を、他の生徒が チラチラ見ている。
 


まだみんな、同じ中学の子や、入学式で話した子と 連れ立っている教室。
 


「2中からは 14人も 入学しているの。多いでしょう。」

私は高校で、新しい生活を 始めたかったのに。
 
「西中出身は、私と もう一人だけ。その子は 1組かな。」

話してみると、美佐子は 他の子と変わらない。


同じ、高校1年生だから。当たり前なのに。