「あいつ、クズだよ。」
昼休み、美佐子はみんなに 昨日のことを話す。
「車に乗るとすぐに、そろそろ地元の仲間とは、距離を置きなさいとか言っちゃって。」
みんな黙って、美佐子の続きを待つ。
「私が、地元で何をしているか、先生 知らないでしょう。って言うとあいつ、美佐子を見ていれば、だいたい解るよ。って言ったの。私を、美佐子とか呼んじゃって。」
美佐子の言葉に、私達は “えーっ” とか “キャー” とか 歓声を上げる。
「私、ちょっとイラッとして。私の 何が解るんだよ。って言ったら、信太郎、私の手を握ってきたの。」
私達は、驚いて 無言になる。
美佐子は、みんなの顔を見て
「そのまま 少し走って、運動公園の駐車場に 車停めてさ。あいつ、いきなり 私を抱き締めたんだよ。」
美佐子は 驚く私達の反応に、満足そうな笑顔を見せる。
「嘘、うそ。マジで。」
「ヤダ、何、それ。」
「信太郎、過激。それで、美佐子どうしたの。」
みんなの言葉の後で、
「私、何するんですか。って言って、信太郎から離れようとしたのね。そしたら、信太郎 純情ぶるなよ、初めてじゃないだろう。って言って、私にキスしたんだよ。」
美佐子は 吐き捨てるように言った。
私達は みんな 予想外の展開よりも、信太郎の言葉に驚いていた。
「何、それ。」
短い沈黙の後、あゆみがポツンと言い みんなが頷く。
「あいつ、クズだね。」
千恵が、美佐子の言葉を真似る。
「マジ、最低の奴だよ。あんな奴、落とす価値なし。」
美佐子が言うと、みんなが頷く。
「本当。見損なった。その後、美佐子 どうしたの。」
私が聞くと、美佐子は
「信太郎を押し退けて、ふざけんなよ。って言って。そのまま、車降りたよ。」
と言い
「何が、生活指導だよ。」
と吐き捨てた。



