拓巳先輩は、20才は 過ぎているように見える。
美佐子は先輩、と呼ぶけれど。
一体、何の先輩なんだろう。
真っ黒に日焼けして 茶色の長い髪を 後ろで束ねている拓巳先輩。
私一人なら、怖くて近付けないタイプ。
美佐子と一緒だから。
美佐子の先輩だから、私でも話せる。
そんなことが、私は嬉しかった。
美佐子は、バッグから 煙草を取り出すと
「浩子も吸う?」
と私に聞く。
「吸ったことないけど。どうやるの?」
美佐子に 近付きたい気持ちと好奇心。
手を出す私に、拓巳先輩は
「やめとけ、やめとけ。」と笑った。
美佐子は 火を付けた煙草を 私に差し出す。
「軽く吸ったら、そのまま吐き出して。吸いこんだら むせるからね。」と言う。
私は頷いて、美佐子に言われたように 煙草を軽く吸い そのまま煙を吐き出す。
「うまい、うまい。最初は、そうやって吹かして 慣れたら、少しずつ 肺に入れるようにすれば むせないから。」
私は、美佐子の言うように、静かに煙草を 吹かし続けた。
「あーあ。浩子ちゃん。美佐子の真似したら駄目だよ。」
と拓巳先輩は苦笑する。
得意気に微笑む私。
「美佐子、学校で煙草吸えなくて、平気なの?」
私が聞くと
「だから 早く帰るんでしょう。」
と美佐子は笑った。



