「あと二日で、1年も終わりだね。」

藤田と話した後、亮太と落ち合う。

ことわざ通り、彼岸過ぎた途端に 春らしくなった空。

私が言うと、亮太は 真面目な顔で私を見た。
 


「去年の今頃、俺 結構、落ち込んでいてさ。」

とポツンと言った。


中学のクラスで 第一志望の県立高校に 落ちたのは二人。

亮太と木村君。


木村君は 大丈夫と言われて受験したから。

亮太よりも ショックだったはず。
 


「うん。」

春めいた道を、手を繋いで歩く。
 
「だからヒロのメール、嬉しかったんだ。」

思いがけないことを、亮太は言う。


「えっ。リョウ、覚えていたの?」

私は 驚いて聞き返す。
 

「当たり前じゃん。」

亮太は 照れた笑顔で 私を見た。
 
「返信、来ないし。届いていないのかな って思ったり。迷惑だったのかなって、心配したのに。」

私は 恥ずかしくて、早口になる。
 


「本当はね。すごく嬉しかったんだ。俺 子供だったから。どうしていいか わからなくて。返事とか。」

亮太も少し、早口で言う。
 
「子供って。一年前じゃん。」

口を尖らせて言う私に
 

「ヒロに、大人にしてもらったからさ。」

と亮太はまた、照れた顔をした。
 
「ちょっと。リョウ、エッチ。」

私が 顔を赤くして言うと
 


「馬鹿。精神的に って意味だよ。ヒロこそ エッチだろう。」

と亮太は笑い、私の頭と小突いた。