時は平安。
京のとある邸宅。

「大君様!」

女房がはしたなくも、ドタドタと足音をたてて、こちらに向かって来る。

「まずい……若草、隠して」

「いいの?お姉様。怒られてしまうわ、母様に」

見つかったら、つまらない手習いをさせられる。
そう思って、妹の若草の元へ逃げた。

橘聖子。
この邸の、長女だ。