見つかったら、まずい。
そう思って、御簾の奥に隠れる。

多少の物音がしたのか、振り返られた。

知らない顔をした方が近づいてくる。
大君は少し怯えながら、そこに座っている。

「桜の君……様でいらっしゃいますか?」

桜の君。
聞き覚えのない呼び名だ。

そもそも、花といえば桜。
桜の名は、才色兼備な、美しい姫君にこそ似合うのである。

大君には、不釣り合いだ。