「ちょっとぉことり!何ぼけっとしてんのぉ。食べないなら下げるわよ」


「ほぇ?」


「何が、"ほえ?"、よ。どうしちゃったのよぉ。せっかく今日はことりの好きな親子丼にしたっていうのにぃ。って、あら?あんたの王子様出てるわよ!」



ちらっと視線を流す。


あぁ、やっぱり。


やっぱり幻じゃない。


あれは陽翔くんだ。


ふぅん。


そっか。



「ことり?」


「ごめん、宿題やんなきゃならないからお風呂入ってとっとと寝るね」


「いやいや、寝ちゃダメでしょう」


「あ、そうだ。じゃ、とっととやる」



親子丼にラップをかけ、冷蔵庫に入れると直ぐ様お風呂場に行った。


蛇口を捻り、そこから出てくる水を見つめる。


陽翔くんは...


陽翔くんは...


私の王子様...


ではなかった。


あんな人だったなんて...。


女子に簡単にブスって言うような最低な人だったなんて...。


私、男を見る目もないのか。


またまたトホホです。



「ことり大丈夫?顔色悪いけどどこか調子でも悪いの?」


「あぁ、うん。ここが...」


「えっ?!心臓?!」


「うん」


「今すぐ救急車呼ぶから」


「大丈夫。そうじゃないから。心の奥底の感情が震えてるだけ」


「は?」



母に伝わるはずがない。


ここは1度退散しよう。



「お風呂沸くまで勉強する」


「いいけど、体調悪いなら無理しないで早く寝るのよ」



お母さんは心配してくれたけど、心配されなくても私は寝れるよ。


だって...


リセットしたいから。