如月の空の下、光る君を見つけた。

私は廊下を駆けた。


これ以上ないくらいに足を回転させて腕をぶんぶん振り、走って走って走った。



「おいっ!廊下は走るな!」



私の腕を掴みかけた体育教師の手を払いのけ、中庭に直行した。


そこには男子を中心としたかなりの数の野次馬がいた。


私は野次馬に紛れ込み、隙間から彼女の様子を偵察した。



「ねえ陽翔くんはどこ?最近全然連絡くれないから来ちゃったんだよね。私の他に一般人と付き合ってるとか言われてるけど、そんなのあり得ないよね?もし陽翔くんのカノジョだって自身をもって言える人がいたら出てきて。じっくりお話ししましょう。どちらが陽翔くんにふさわしいか決めようじゃありませんか」



ヤバイ。


こりゃまずいことになった。


なんとか女性の教頭が宥めに入ったけれど、これでもうほぼ如月陽翔がここの学生だってバレたようなものだ。



「如月陽翔ってアイツだよな?」


「CRESCENT解散ってもしかしてアイツの素行不良が原因?」


「なんか色んな女に手ぇ出してそうだもんな~」


「マジでそれな」


そんな...。


陽翔くんは、


詩央くんは、


そんな人じゃない。


そんな人じゃないっ!


叫ぼうとする前に教頭がメガホンを口元に近付けるのが見えた。



「皆さん教室に戻って下さい!8時40分までに着席しないと欠席扱いにします!」



教頭のその一言で皆は蜘蛛の子を散らすようにいなくなった。


私は雲のようにふわふわとした足取りで流れに乗りながらその場を去った。


なんでこんなことになっちゃったんだろう。


私が守るって、私が詩央くんの普通の生活を守るって約束したのに。


どうして...?


このままじゃ、詩央くん...


詩央くんがここからいなくなっちゃう。


私、どうしたらいいの?