如月の空の下、光る君を見つけた。

「あの、すみません」


「ほえ?」


「私、週間文青の丸山と申します。こちらに如月陽翔さんが通ってらっしゃいますよね?同じ学校の生徒とカラオケに入って行くのを見たのですが、その生徒さんをご存じですか?」



やばば。


マジであの日のことじゃん。


つまり、この人たちは私を熱愛相手だと勘違いしているわけか。


それはそれは本来なら嬉しい限りなのですけれども、詩央くんから普通の生活を送りたいと言われ、協力しないと縁を切られかねないというのに喜んでいられません。


ここは無言突破?


いや、待て。


無言は逆に怪しまれる。


なら、私は...堂々と嘘をつこう。



「如月陽翔さんがいたら学校中が騒ぐと思います。通っていたら良かったですけど、生憎見たことないですね。一般人と勘違いしたのでは?」


「残念ながらそんなことはないんですよね。カラオケの店員さんにお話を伺ったところ履歴にCRESCENTの曲が残っていたそうです。しかも通りかかった時にちらっと耳にした歌声がまさしく如月陽翔の声だったと。如月陽翔が女性と入店したという事実はカラオケボックスの入り口に設置されていた防犯カメラを見て確認済みです」