男子がいた。


たった1人夕日に顔を背け、私の方を向いて静かに寝息を立てている。


もしかしてこの人...


片桐くん?


起こさないようゆっくりと近付き、顔を覗き込む。


すっとした鼻筋。


綺麗な卵形の顔。


顎のラインがたまらなくキレイ。


そして、柔らかそうな薄ピンク色の唇。


...ん?


この顔...


この顔どっかで見たような...。


いや、でも眼鏡かけてるしそんなこと...


でもでも、やっぱり...。



「陽翔くん?!」



思わず大声を上げてしまった。


やばばっ。


やばっ。


帰らなきゃ。


これは幻。


私の目がついに幻を見るようになってしまったんだ。


一般人と好きな人の区別もつかなくなるなんてもう最悪!


慌てて自分の席に向かおうとすると、



「ぎゃばっ!」



ぎゃープラスやばっの造語、ぎゃばっが爆誕。


私は誰かさんの机に思いっきり足をぶつけた。


痛いってレベルじゃない。


こりゃ、間違いなく死ぬよ。