壁から体を離し、私の横を通りすぎようとする。


私は咄嗟に左腕を掴んだ。



「何すんだよ」


「何もしない」


「なら離してくれ。これから仕事だ」


「仕事の前に私の話は聞いてほしい。ここに連れてきたくせに一方的に問い詰めて鬱憤吐き出したら終わりなんて、そんなの私は認めない。私も言いたいこと言う」


「言うなら早くしてくれ」



この人は私の好きな陽翔くんじゃない。


だけど...


だから...


私は...。



「私は如月陽翔が好き。大好き。いや、大大だーいっ好き。だけど、それがあなたじゃないっていうなら、私があなたっていう人の本質を見つける。片桐詩央を全力で応援する。そして...好きになる!」


「は?」


「私にはどんな顔したっていい。陽翔くんの顔じゃなくていい。全部私は受け入れるから」


「意味不明な女だな。ま、いい。ここにいる間は君に世話になるから、今日はこの変で終わっておこう。じゃ」


「明日も学校に来てね。待ってるから」