幼稚園生の頃の話をここまで思い出せるなんて凄いことだと思うのは置いておいて。
その後のことは、母と父は離婚してお金に余裕のない母は親権を得ることができずに裁判の結果、父に引き取られた私は地獄の日々を送ることになった。
新しい母は私に対して陰湿な嫌がらせが多かった。…そうだなぁ。私が作った料理にわざと蝿を入れて父に出させて殴られたっけ。中学生になって剣道部に入った私を部活に行かせないようによく監禁された。やせ細った身体でも剣道には自信があって、始めて数ヶ月で先輩を抜いて県大会、関東大会レベルだと褒められたが1度も大会に出たことはなかった。
「おい、りん。」
「はい、先生」
凛々しく、鋭い声だがどこか温かな声が道場に響く。
「ご両親に相談して大会に出られるようにお願いできないのか?」
どこか残念そうにそして期待するような顧問の先生の瞳に私の顔が映る。…醜い顔だなぁ。
「ありがとうございます、先生。ですが多分無理だと思います。」
私の事情を知らない顧問の先生は顔を顰めてため息を漏らす。
「そうか。残念だ。でも、言ってみてもいいんじゃないか?そこまで過保護にならなくても…」
私だって可能性があるならそうしたかった。