何も残っていない町の残骸を照らす夕陽。家1つもない殺伐としたこの土地を私は離れた。
クロウが死んだ。
「「アランっ、俺はまだ小さいけどもう少し大きくなったら凄く強い魔道士になるつもりなんだ!」」
「「つもりでしょ?本当になれるかな?」」
赤く燃え上がる太陽の熱は身を焦がし、風を掴んで離さない力強い翼は溶けてゆく。雲になびいて輝く毛並みが蒸発する。
「「なれるさ!そしたらアランと契約してアランはずっと安心できるよ、俺が守るもん」」
胸を張るクロウ。にひひと笑う健気な男の子。
「「もう守ってくれてるでしょ」」
私はクロウを愛していた。姉に近い感情を抱いていた。毎日湖に通って来るあの子を。
ーーおおぉおぉおぉおおーー
なんで守れなかった…!あの子は最後まで私を…この私を…
帰りたい。帰りたい。湖に帰って何もかもをやり直したい。黄金を袋に詰めたあの日に帰りたい。
「クロウっ…!」
私は湖を目指しひたすら翼を動かした。
もう何もかもどうでもよかった。